心不全① 定義とステージ
心不全① 定義とステージ
⚫国民病の心不全
平均寿命が延び、長生きする方が増えてきた一方で、「心不全」という状態を患う方が増えてきました。
日本人の死因第二位である心臓病のうち、心不全が一番多く、2020年に120万人が罹患していると言われています。
最近ではテレビでも「心不全」という言葉を耳にします。
「心不全」とは一体どういった病気なのでしょうか。
日本循環器学会の2017年に改訂されたガイドラインには
『心臓が悪いために,息切れやむくみが起こり,だんだん悪くなり,生命を縮める病気です』
と書かれています。
心臓が悪いと息切れやむくみがでる、そして寿命を縮める、と。
何だかとても怖いです。
⚫心不全のステージ
ガイドラインでは、心不全を下記の様に分類しています。
※()内はこちらで勝手に名付けたものです。
ステージA. 心臓はまだ悪くないが、悪くなる要素を持っている人たち(=心不全予備群)
ステージB. 心臓に異常が見られはじめたが、まだ症状のない人たち(=心不全初期群)
ステージC. 心臓に異常が見られ、それによる症状がある人たち(=心不全真っ只中群)
ステージD. 心不全の治療を十分行っているが、何度も悪くなってしまう人たち(=心不全治療抵抗群)
それぞれについて詳しく解説していきます(便宜上、ステージAは『予防』で解説します)。
心臓は左右に2つずつ、合計4つの部屋に分かれています。
肺で酸素を取り入れた血液は心臓の左側(左心系)に入り、そこから全身へ送りだされます。
全身から戻ってきた血液は心臓の右側(右心系)に入り、また肺へと送りだされます。
このようなポンプ活動を、心臓は一日に約10万回、休むことなく繰り返しています。
心臓肥大や拡大、弁膜症、心筋梗塞などで心臓に異常がみられると、
何も問題がない状態と比べて心臓の働きが低下します。
しかし休むことが許されない心臓は、自分に鞭を打って頑張ります。
多少無理をしているのを知ってか知らずか、それでも毎日毎日鼓動を刻みます。
一見いつも通りに働いている様に見えて、少しずつ疲弊していく心臓。
この状態がステージBになります。
人知れず頑張ってポンプ活動をしている心臓ですが、
やがては破綻してしまいます。
全身に血を送り出す左心系が弱ってしまうと、左心系の手前で血液が滞ってしまいます。
左心系の前にあるのは肺です。
肺に血液が留まってしまい、酸素をうまく取り入れられなくなってしまうため、息切れがでます(肺水腫)。
また、右心系に入る血液が滞ってしまうと、全身に血液が留まってしまいます。食事量が増えたわけでもないのに体重が増え、足が腫れてきたり(下腿浮腫)、胸の中に水が溜まって(胸水)これまた息苦しくなったりもします。
これが心不全ステージCです。
ステージCになれば自覚症状があるので、病院を受診、検査をして心不全と診断、治療が開始されると思います。
ただ、ガイドラインの定義にあるように
「だんだん悪くなる」
のが心不全の特徴です。
お薬がよく効いて、ほぼ完治に近い状態まで戻る方もいらっしゃいますが
多くの方が色々なペースで進行します。
入退院を繰り返します。
その結果お薬だけではコントロールが難しいステージDになってしまうのです。